勝ったほうが負けたほうに何でもひとつお願いできる

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 キトエが吹っ切るように微笑みを作る。 「朝ならもう作ってある。リコが寝てるあいだに作っておいた」 「そうなの? 楽しみ。うまくできた?」 「ああ、ううんと、それは」  キトエが目を泳がせる。自分から言っておいて失敗したのかと、リコは微笑ましくなる。キトエは心がすぐ顔に出る。顔はとても綺麗なのに、そういうところは可愛い。今日も金の翼のピアスに下がった、水色の宝石がキトエの薄水色の髪のあいだできららかに揺れている。  食堂へ踏み出すとき、隣のキトエの手を握った。キトエは戸惑ったようにリコを見て目をそらしたが、手は振りほどかれなかった。リコは胸の中の温かさと泣きそうな気持ちをかみしめて、キトエと食堂へ歩き出した。  食堂にはキトエが作った炒り卵がたくさんと、火であぶったパンが置かれていた。卵はもそもそで、水をたくさん飲んでしまったが、キトエがリコのために頑張って作ってくれたのが嬉しかった。大量の炒り卵は最終的にパンに挟んでたいらげた。
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