顔に出てる

2/5
前へ
/80ページ
次へ
 リコとキトエは出会ったときから主と騎士で、恋愛関係になってはいけない間柄で、キトエはリコを女性として見ていないだろうと思ったから、軽い気持ちで言ってみただけだった。  けれど、キトエは黄緑の目を見開いて、黄緑に橙と黄色の欠片を揺らして、色をこぼしたように頬を染めた。 「主じゃなくても女性にそんなこと言ったらただの変態だろっ……」  キトエの反応が意外だった。一応女性としては認識されているようだ。『主』という性別のない存在として扱われているのかと思っていた。 「ええと、ごめんね。冗談だよ。ほかにあったら言って」 「特にない」  キトエは恥ずかしそうに顔をそらしてしまった。騎士にこういうことを言ってはだめだったか、とリコは反省する。 「じゃあお願いは取っておいていいから」  聞こえているのかいないのか、キトエはリコのほうを見ないままだった。 「じゃあ二回目ね」
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加