もっと一緒にいたかった

1/5

82人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ

もっと一緒にいたかった

 小さなこの国には風習がある。十年に一度ほど、神に生贄を捧げる。結界の張られた辺境の城で、生贄は三日間神と波長を合わせたのち、城の頂上から花畑へ身を投げる。城に入れるのは生贄と付き人がひとりだけ。  選ばれるのは大抵魔女と疎まれる魔力の強い少女だった。だからリコはこの風習を言い伝えに乗じた合法の人殺しだと思っていた。城の結界などというものはなく、行けばどうにかして逃げられる方法があるだろうと信じていた。  けれど城の結界は本物で、入ったら赤い光の壁に阻まれて出ることができなかった。おまけに入ったときから『何か』とつながって、魔力を吸い取られていく感覚があった。  神は本当にいるのか、それともとがめられることなく人を殺せるように作った呪いなのか、どちらなのかは分からない。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加