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キトエの表情がさらに困惑を深める。主にそんな態度をとれないというのと、主の命令という葛藤で、『どうすれば』という顔をしている。キトエは心がすぐ表情に出るから可愛い、とリコは笑いをこらえる。
キトエはリコの護衛の騎士だ。リコが十一歳のときから仕えている。リコが十五、キトエが十九歳だから、四年の付き合いになる。ふたりきりのときは敬語は使わないようにと言ってあるので、キトエは従っている。
案の定、最初は『主にそんな口の利き方はできません』と困った顔をされたが。
「いくらリコの命令でも、それは」
「わたしが恋人だと不満? わたしのことが嫌い?」
悲しげにキトエをのぞきこむと、慌てたように顔をそらされた。
「それは、そんなわけ」
「じゃあいいでしょ?」
「そういう問題じゃ」
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