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「進学先は、どうする気だ?」
静岡県S市に住む高校三年の弘は、夏休みが近付いたある日、担任から、そう訊かれたので、
「はい、東京のT大学を目指してます」
と、きっぱり答えた。
「そうか。キミなら、なんとかなるか」
担任は笑顔で言うと、職員室に向かった。
弘は教室の窓の前に行くと、東京方向の空を見詰めた。
東京のT大学は、数年前に急死した兄・清が、将来性から選んだ進学先だった。
弟の弘としては、清が暮らしていたマンションに住むことによって、急死した事情などが知れるかも? という思いがあったからだった。
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