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エピローグ
「ねぇ一平はさぁ、高校の時、好きな子とかいたの?」
助手席にいる香織の声で、我に返った。
「まぁね…… 片想いだったけど……」
僕は杉下美南の顔を思い浮かべる。
信号待ちをしていると、フロントガラスに一片の桜の花びらが落ちてきた。僕はワイパーのスイッチに指を掛けたが、動かすのを止めた。信号が青に変わって車が走り出すと、フロントガラスの花びらが舞い上がった。
青空にくっきりと浮かび上がるさくら。やがてどこかへ消えてしまう儚い運命。僕の胸に微かな痛みが走った。それは、胸のずっと奥のほうをキュッと締め付けるような痛みだった。
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