ラビットハンド

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ラビットハンド

 私は今何処にいるのか分からない。だが、何処か既視感がある。私は今、石に囲まれている。其処には、death,die,deadと書いてある。悪寒がする。ぴゅう、と音がなって、冷たい風が私を舐める。すると、もう一つの壁の文字に気がついた。其処にはrabbitと書いてあった。私の心の中に、一つの画像が浮かんだ。にやりとこちらに不気味に笑う兎。爛々と輝く目が、どんどんこちらに迫ってくる。私は戦慄を禁じえなかった。冷や汗が背を滴り落ちた。  突如、部屋の中に、一匹の兎が、舞い込んできた。チョッキを来た、赤い目の兎。血のような赤い目をした。釁られた目。狂気に満ち満ちた表情。歪んだ口元。私は叫んだ。  目が覚めた。依然として私は石の壁に囲まれた部屋にいたが、前のように恐ろしさは感じなかった。兎なぞ、其処には居なかったのだ。そして私は部屋の壁を再度見た。其処にはdeath,die,dead等書いて無く、代わりに、eatery,cookie,ead(古英語で幸福の意)とあった。そして、私がずっとrabbitだと思い込んでいたものは、本当は、lab bitだったのだ。  私は上にある出口から出ると、埃を払って、家に帰ろうとした。  あれから五年の月日が経った。  実は『私』がlab bitだと思ったものは、loop itだったのだ。
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