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初めての一人暮らしは、大学生活の忙しさで寂しさを感じる暇もなかった。
サークルに入ってからは、新しい友人がたくさん出来て、毎日があっという間に過ぎて行く。
先生に近況を報告しても、あまり返信はこない。
「頑張れ」「楽しんで」などのスタンプが、たまに送られるだけ。
それでも不安はなかった。
先生と過ごした濃密な3年間が、私の心にしっかりと根付いていたから。
そんなふうに、思い込みたかっただけなのかもしれない。
夏休み、地元に帰る友人達が多いなか、私は帰るのを止めた。
もう既読もつかないメールや、すぐに留守番になる電話から、先生の気持ちは離れているのはわかっていた。
それを確かめるのが怖かっただけ。
大学2年の夏に、サークル仲間の翔太から告白された。
1年前まで、先生しか考えられない、先生と結婚するのだからと意気込んでいた自分はもういなかった。
それでも、心の片隅に先生はまだいる。
返事は急がないと、はにかむ翔太が眩しくて、そっと目を逸らす。
その夜、先生に電話をかけ続けた。
メールも繰り返し送った。
《大切な話があります》
いくらかけても、いくら待っても返事はなかった。
「先生……これが私達の答えなの?」
思い出も、愛しているの残り火も、全部涙で流してやった。
2日後、私は翔太に返事をした。
YESと。
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