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湿度の高い曇った街を、足早に学校へと急ぐ。
雨が降ってくれば、タイムカプセルは掘り起こせない。
今日諦めたら、もう二度と掘り起こそうなどとは思わないだろう。
忙しさにまた流されて、タイムカプセルは永遠に土の中になる。
そんな風に自分に言い聞かせ、懐かしい校門をくぐると、事務室に向かった。
事務員のおじさんに事情を説明すると、快く承諾してくれた。
「今どきタイムカプセルなんてね?よほど仲の良いグループだったんだね」
──仲良し4人組が埋めたタイムカプセルを、掘り起こしても良いか?
私のついた嘘を疑いもせず、スコップまで持って来てくれた。
校舎裏は、今では要らないものを置いておく場所になっていた。
錆びついた自転車や、テニスの破れたネットに壊れた椅子などが、1箇所に集めてある。
その奥に、花壇はあの当時のまま、何も植えられずに放置されていた。
花壇のまわりは雑草だらけで、中は何も生えていない。
乾いた土に石が混ざり、掘るのに苦労しそうだ。
ザクッ。
意外とスコップが、土の中に入ってくれる。
「そんなに深くなかったよね」
ザクッ、ザクッ。
二人で買ったステンレスのタイムカプセル。
劣化も水が染み込む事もないからと、お店の人に勧められて決めた、筒型の可愛らしいタイムカプセル。
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