14人が本棚に入れています
本棚に追加
「見つけたんだね?」
突然かけられた声に驚き、タイムカプセルは花壇の中に落ちた。
振り返ると、あの頃とまるで変わらない先生が、薄っすらと笑みを浮かべ立っていた。
「先生っ!?」
先生はゆっくりと近づき、私の耳元で囁いた。
「二人で掘り出そう、そう約束したのに。いけない子だね、朱里は」
先生はタイムカプセルを拾うと、興味がないかのように、ガラクタが置いてある場所に放り投げた。
「先生!何するの!」
「それより朱里、見たのか?」
先生は、私がタイムカプセルを掘り出した穴をジッと見つめたままそう言った。
鼻にかかる甘い声が、今は冷たく聞こえる。
「中はまだ見てないけど……」
「そうか……中はね」
先生は側にあったスコップで、穴を掘ってゆく。
なぜだろう、その姿はあの頃の先生とは違い、背筋がゾッとするほど異様に見える。
「問題です。ここには何が埋まっているのかな?わかりますか?」
授業の時の口癖が、異様な雰囲気に拍車をかける。
私の心臓が早鐘のごとく打ちだし、指先が震えだした。
風が二人の間を通り抜ける。
まるで、深い溝を作るように吹き抜ける。
乱れる髪もそのままに、顔を上げた先生は初めて懐かしそうに私を見つめた。
「今回は、さすがにドキドキしてしまったよ。朱里が、余計なものまで掘り起こしてしまうんじゃないかってね」
最初のコメントを投稿しよう!