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先生は掘っていた土の中から何かを掴むと、私に見せてきた。
「あ〜あ。静かに眠っていたかっただろうに……朱里は昔から、好奇心を抑えられないんだね?」
「ヒッ!!骨──」
私達のタイムカプセルのさらに下には、先生の秘密が埋まっていた。
浅く埋めたのは甘い想いからではなく、下に見つかってほしくない秘密が埋まっていたからだ。
「高校生の朱里は可愛かった。透明感があって、みずみずしくて……何よりもピュアで」
ジリッ、ジリッと先生が近づいて来る。
「この子も、あぁ……あの子も。卒業すると大人びて、打算や媚や覚えなくていい事まで覚えて。一気に冷めてしまうんだよ……」
「来ないでっ!!」
先生はもう、私の目の前まで来ている。
心臓は痛むほど暴れていた。
「僕はね、朱里。朱里が一番好きだった。疑わないピュアな朱里が。だから見逃してあげたのに……昔の思い出なんか忘れていれば良かった、そうだろ?」
表情がない能面のような顔に、目だけ血走らせ、先生はスコップを掴む。
それは、逃げようとしていた私の後頭部に振り下ろされる。
頬に冷たい土の感触を感じながら、私の意識は暗転した。
「思い出はすべて、土に還るのが正解だろ?」
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