準備

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気が付けば、震えと吐き気を堪えていた。 周りは誰一人知ってる人はいない。 もちろんだ。 私はゴク言う「普通の両親に普通の子として育てていただいた」 なのに、今隣に座ってる人、向かい側に座っている人、この部屋の全員、階段で順番待ちしている人全員多重債務者だから。 「幾ら?」 「パチンコで?」 「今回アレしてもらったら、心いれかえっぺー」 こんな会話があちこちから聞こえて来る。 自分を特別だと思った事はないが、一瞬で「一緒にしないで!」と心で叫んだ。法テラスの待合室。 いつになったら私の順番なんだろう。一刻も早く帰りたい。でも有給も残りわずか…今日決めないと離婚出来ない。早く離婚したい!催促の電話から逃れたい!支払い辛い…。親にバレたくない…。 「35番の方どーぞー」 あっ、やっと、私の順番。 「はい、鈴木清海(スズキキヨミ)さんですね。いつから借りてます?何社?記載の通りかな?他にあります?んー、弁護士さん紹介しますね。弁護士さんから連絡行きますから数日お待ち下さいね。はいっ」 えっ?これだけ? 私「はい」しか言ってないけど…? これで私救われるの?生きて行ける?眠れる? 生きていって良いのかな?やり直せるのかな? 私の人生…って…、今借金幾らぐらいあるんだろう。借金したら人生終わりなの?離婚したらダメな人って証拠なの?失敗した人なの?それって誰が決めるの?基準ってあるの? アイツの性で、アイツの借金、アイツのため、、、。 「もぅ、いいかなぁ」と思える様になったのは最近。体重計が38kgを指したから。だいぶ減ったなぁー。デニムは24インチも緩くなって150cmを履いていた。久々に顔を合わせた妹の親友に心配された。食べれない&眠れない私の顔は…般若の様だった。食べれば吐く、考えてばかりいて全く寝れない…いつまでやってるつもり、私!まともじゃない!気が付け!身体が!精神が悲鳴を上げてる!あんなヤツの為にお前は全てを捧げるのか!アイツはお前が死んだら喜ぶだけだ。なんなら死ぬのを待っている。ただただ保険金が入って来るのを楽しみにしているよっ。なんて言ったってアイツは配偶者、「保険金受取人」だからねっ。 心配性の私は幾つか生命保険に加入していた。 子供の頃から親が契約していた農協の生命保険。 社会人になってからの会社の生協で加入出来る生命保険、ガン保険。 今死亡すると合計で2500万円ほど受け取れるはず。 ラクにはなりたいけど、アイツに金が渡るのも納得行かない。 借金の整理を進めて、実家を出て一人暮らしを始めて、離婚して…やらなきゃいけない事は山積み。 離婚届に記載してもらうまでアイツを上手く誘導しないと…。逃げられたら離婚出来ない。 何が何でも離婚しなきゃ! 関わった私の10年返してよ!なんて言ってられない。これからの人生の方がきっと大切に違いない。何歳からでもやり直しは出来るはず。とにかく、アイツから離れなきゃ。親や兄弟…家族を護らなきゃ! アイツは「藪蛇」。 気が付いたらトグロの中に居た私。息を吐くたび締め付けてきて逃げられない。 「       」 私の叫び声…聞こえたかな?
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