【3】

1/4
前へ
/17ページ
次へ

【3】

「お母さん、いきなりごめんね」 「気にしなくていいわ。なんならこっちで寝かせるから。……まーちゃん、じーじとばーばと遊ぼうね」 「うん!」  真斗を連れて隣の実家を訪ねた沙織に、母は素知らぬ風に微笑んでくれる。 「そうね、もしかしたらお願いするかも。泊めてもらうなら朝迎えに来るから。どうするかはまた連絡するわ」 「はいはい」  再度感謝を述べて、沙織は自宅に引き返した。 「おかえり。お義父さんとお義母さんには面倒掛けちゃうな」 「大丈夫よ」  素っ気なく返した沙織に、夫は真剣な目を向けて来る。 「沙織。僕からも話すことあるんだ。先に聞いてもらってもいいか?」 「……わかった」  これが二人の、家族の、最後になるかもしれない。声が震えそうになるのが止められなかった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加