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「沙織が気にしてるのって、土曜の病院だよね? ──誰かに、会った?」 「ええ。男の子連れた、若い女の人」  喉が乾いて張り付くようだ。どうにか絞り出した返事に、彼は微かに頷いて話を続ける。 「そうか、やっぱり。礼したいって言ってたし。あの子は、……美保ちゃんは僕の異母妹(いもうと)だよ。──クズ親父が浮気して生まれた子」  異母妹。  蒼良が真斗のではなく、洋介と美保がだった? 「そんな大事なこと。──なんで今まで話してくれなかったの!?」  衝撃のあまり問い詰めるような口調になった沙織に、夫は苦しそうに顔を歪める。 「……怖かったんだ。君にもだけど、君のご両親に顔向けできない気がして。僕が母子家庭育ちだって知ってもまったく態度変えなかったよね。今だって本当に良くしてくれてる。『普通のおうち』がすごく羨ましくて、居心地よくて、──失くしたくなかった」  彼の気持ちもわからなくはない。片親で理不尽な思いも飽きるほどして来たといつか話していた。  だから、沙織の両親の自然な対応がとても嬉しい、とも。
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