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洋介の甥で真斗の従兄に当たる蒼良。
初めて伯父と甥が顔を合わせてから二年も経たない。沙織も知るように、洋介には自由時間はさほどなかった。
縛った覚えなどないが、彼自身が何よりも家庭第一だったからだ。
今も口にしたように、両親と子どもで仲良く過ごすことが一番の望みだったのだと俯き加減で呟く夫。
その通りだ。
洋介は父親としてはもちろん、沙織の夫としても申し分なかった。『証拠』を突き付けられたとはいえ、疑ったことを今更申し訳なく思うくらいに。
「洋介。もしよかったら、あ、向こうがね。……私、美保さんと蒼良くんに会ってみたいわ。親戚だもの」
弾かれたように顔を上げた夫に、敢えて謝罪の言葉ではなく沙織は笑って見せた。
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