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【4】
「だいたいさぁ、美保ちゃんが蒼良に僕を『伯父さん』て呼ばせないから」
早速約束した次の土曜日。沙織と洋介は、美保の自宅マンションを訪れている。
今日も真斗は実家に預けて来た。まだ三歳の息子には、とりあえず親が顔合わせを済ませた後のほうがいいだろうと判断したのだ。
「だって……。『伯父さん』なんて厚かましいじゃない」
「厚かましいって、むしろその感覚がわからないんだけど。『ようちゃん』の方がよっぽど変じゃないか?」
呆れたような洋介に、美保が弁解し始めた。
「あたしの母親のせいで洋介さんの両親は離婚したのよ。人の幸せ壊して平気でいられる無神経な女との関わりなんて、洋介さんには何もいいことないでしょ」
「……そうだね。正直、君のお母さんにはいい感情はないよ。ついでに親父にも。でも子どもは別だ。美保ちゃんに責任なんてあるわけない」
「洋介さ──」
何か言い掛けた美保に洋介が言葉を被せる。
「だから、そこは『兄さん』だろ? こういう言い方は何だけど、名前で呼ばれる方がよっぽど誤解招きそうで困るんだよね」
「あ! そうよね。ごめんなさい。でも」
それでもまだ言い募ろうとする美保と、おそらくは説得しようと待ち構える洋介。
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