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「蒼良くん、私は伯母さんよ」
母親と「たまに会う、知ってるおじさん」との応酬を不安そうな顔で見守っている少年に、沙織は笑顔を向けた。
「そう! 僕は伯父さん。よそのおじさんじゃなくて、ママのお兄さんなんだ」
沙織の自己紹介に、横から夫も続く。
「伯母さんだけど、沙織ちゃんでも──」
「ママより年上で子持ちなのに『ちゃん』はないって! 沙織伯母ちゃんだよ。僕は『ようちゃん』じゃなくて洋介伯父ちゃんだ」
妻を笑いながら制して、洋介が突っ込んだ。彼の言う通りなので抵抗する気はそもそもない。
「従弟もいるの。真斗って名前で、三歳だから蒼良くんの方がお兄ちゃんね」
「おにいちゃん、……まなとくん、ぼくのおとうと?」
「いや、従弟だって。──蒼良には今まで『従兄弟』っていなかったからわからないか」
蒼良の弾んだ声に、洋介が訂正を入れながらも困惑している。
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