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「……わかった、行くわ。どこ?」 『北区の安西病院。知ってる、よね?』 「大丈夫。すぐ向かうから。真斗は(実家)に預けてく」  今住んでいる家は、隣に住む沙織の親の持ち物だった。一応敷地は別で、間に低い柵もある。  同居ではないが、妻の両親がすぐ傍にいる環境はどうかと危惧するまでもなく、洋介はなんの躊躇いも見せずに快諾してくれた。 「こんないい場所に住めるなんて思わなかった! お義父さんとお義母さんに感謝しないと」  そう手放しで喜びを表していたほどだ。  小学生の頃父親と離婚した母親に、女手一つで育てられた夫。  義母は一人息子の結婚と初孫である真斗の誕生を見届けるようにして、二年少し前に短い闘病の末この世を去っていた。ずっと働き詰めで、息子を大学まで行かせるためにかなり無理を重ねていたようだ。  洋介は父親については普段から一切口にしない。  父が母を裏切って離婚したとだけ、沙織と付き合い始めたときと結婚の話が出て家に挨拶来た際に強張った表情で話してくれた。  沙織も両親も、彼に直接聞かされた以上のことを詮索する気はない。  洋介も彼の母親も、十分過ぎるくらいに善良な人間なのは会って話せばすぐにわかったからだ。
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