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「ごめんね、沙織。お義父さんとお義母さんにも心配掛けちゃうかな」  駆け付けた病院で、処置室のストレッチャーに腰掛けて待っていた夫は思ったよりも元気だった。 「何があったの? 事故とか?」 「う、ん。歩道で後ろから自転車が走って来てさ。あ、別にぶつかってはいないんだ! ギリギリ横すり抜けられて、大丈夫だったんだけど、その。男の子が危なかったから、庇って転んだ時に変な風に手を付いちゃって」  手首の捻挫だという洋介は、固定された左手を視線で指して微妙な表情を浮かべている。 「あ、そう、なの。その男の子は何ともなかった……?」 「うん。びっくりしてたけど、膝擦りむいたくらいだから」  なぜか重い口調で訥々と話す夫。彼の性格からして、自慢はしないだろうが明るく冗談めかして告げそうなものなのに。 「……とりあえず右手(利き手)じゃなくてよかったわ。じゃあ私、手続きしに行って来るわね」
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