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「ねー、まま。まーちゃんもおにいちゃんほしい」  先週保育園で同じクラスの子に妹が生まれた、というニュースに、真斗は常日頃から飽きずに繰り返していた希望をまた口にしていた。  確かに一人っ子は多いが、兄弟姉妹のいる子もそれなりにいるのが意外だった。出産したばかりの人の他にも、妊娠中の保護者仲間がクラスにはもう一人いる。 「お兄ちゃんは無理なのよ〜」  弟妹なら、というのも簡単には告げられなかった。真斗ひとりでもなんとかという状態なのに、更に子どもが増えたらどうなるのか。  元気な両親がすぐ傍にいて手伝いも期待できる上、保育園も激戦区というほどでもない。周りを見ても、フルタイムならきょうだいはまず同じ園に入れるようだ。  同居なら入園の難易度は格段に上がるのだが、近居ということで特にマイナスにはならないらしいことも知っている。  自分がかなり恵まれた環境だということくらい理解していた。  親どころか我が子に同じ責任を負うはずの夫の手さえ当てにできずに、一人奮闘している母親も珍しくはない。  そういう人から見れば「何を迷うことがあるのか」と𠮟られそうだが、欲しいから、産めば何とかなる、と安易に考える気にはなれなかった。
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