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「まったく。私がわざわざ休日に会ってあげようと、予定を空けておいたのよ。そもそも、平日よりも休日がいいって言ったのはあんたでしょ。解ってんの?」
「は、はい。それはもう重々と」
これは一時間ほどは愚痴を言われるなと、慧は覚悟を決める。残念ながら、この時間は二人揃って講義がない。つまり、悠月からするとマックス九十分は文句言いたい放題だ。どこぞの食べ放題みたいになっている。
もちろん、総ては慧が悪い。今後の進路を考えるために、動物園に行こうという約束をすっぽかしたのだ。二人は生物学科の学生で、そろそろ四年生になった時のことを考えなければならない時期にある。そんな、先々のことを考えましょうという約束を、慧は見事に忘れてゲームに没頭してしまった。
何も考えていないと言われても反論できない。
自分が何を研究したいか、それを考えようという時期に至っても何も決まっていない。
そんなことは解っているのだが、動物園にわざわざ行くのが面倒だった。もちろん、そんなことは口が裂けても言えない。だから黙って愚痴を拝聴するしかないのだ。
「あれ、珍しい?」
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