22人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、予想に反して愚痴はすぐに終わってしまった。
何が珍しいのか。擦り付けていた額を机から離し、顔を上げた。悠月が見ているのは教室の入り口だ。そこに、真っ黒な服装の人物が一人。付け加えると長身の男だ。
「変人相川」
慧は思わず声に出して言ってしまった。すると、相川がこちらを見る。慧は思わず首を竦めた。悪口を聞かれたと思ったのだ。
「そこの君。たしか牧野慧だったな」
「へっ」
しかし、その変人になぜかフルネームで呼ばれる。当然、慧は間抜けた声を上げた。横にいる悠月も、何で知ってんだという顔で二人の顔を見比べている。
というのもこの相川という男、フルネームは相川成人といい、学生ではなく教授だ。詳しく述べるならば、工学部情報学科に所属する、人工知能を研究している教授だ。
年齢は四十一。身長百八十センチ痩せ型で、そしていかにも理系な雰囲気の持ち主であると書けば、外見の説明は大体が説明が終わる。
付記するならば、なかなかのイケメンで腹立つということぐらいだ。
「そうですけど。俺に何か用ですか?」
最初のコメントを投稿しよう!