偽りの島に探偵は啼く

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「だから、窓を割るってのも不必要な要素だよね。他に誰かいるわけないのに。あっ、アリバイ工作か」 「ううん」  言われてみればそのとおりで、たとえ台風が来ていなくても犯人はここにいる誰かと限定されてしまうのだ。そんな中、確実に疑われると解っていて事件を起こすだろうか。 「警報が鳴ることを犯人は知っていたのかな」 「さあ。確かにあのタイミングで鳴ったから、全員にアリバイがあると証明されたわけですけど」 「ううん」  意外と考えることが多そうだぞ。  朝飛は思わず唸ってしまっていた。  次は直太朗がやって来た。レストランにいる全員に次は誰がいいと健輔が聞くので、自分が立候補したとのことだ。これでは、こっそり聞き取り調査という体裁を成していないが、仕方がない。  結局、誰もが話題を振ってくれるのを待っていたというわけか。別に解決する必要はなく、次の事件の発生を防げばいいと思っていたのは朝飛だけらしい。 「そりゃあそうだよ。出来れば犯人ははっきりさせたいじゃないか。佐久間兄弟だって行方不明なんだし」
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