偽りの島に探偵は啼く

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「ともかく、佐久間ホールディングスが全面に絡んでくるらしいし、そう一筋縄ではいかないのは間違いない。企業が研究に絡む場合、どうしても目に見える成果を上げろと要求してくるのが妥当だからね。それは高校生相手でも同じだと思う。でも、研究施設は充実しているし、宿泊施設もちゃんとあるし、何より三食タダだし、総てが佐久間持ちらしいから、損はないと思う」 「最後の方は随分とみみっちい話になってるよ」  しかし、三食付いて宿泊施設もあって、そして適度に研究できる。これだけならば美味しい話だ。美樹もまあ、一か月くらいならばいいかと思えてきた。それに、加速器を稼働させ始めるだけで一か月なんてあっという間に過ぎてしまう。根を詰めて研究する必要はなさそうだ。 「気分転換にもなるだろうし、いいだろ」 「そうね。問題はその合宿までに、夏休みの課題を終わらせなければならない、ってことかな」 「そうだな。そうだった」  いくら佐久間ホールディングスが絡む研究とはいえ、高校が夏休みの課題を免除してくれるとは思えない。ということは、夏休みがスタートして三日度ほどで、ある程度片付けておく必要がある。
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