偽りの島に探偵は啼く

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 早口で捲くし立てるように言う聡明に、倫明は反論せずに耳を傾けるしかない。この兄はまあ、生まれながらにして経営者のような人なのだ。だから納得のいかない、いや、損得勘定では納得できないことに関して、殊の外厳しく追及してくる。 「それで、お前から見てどうなんだ。そのベビーユニバースとやらの研究ってのは」 「そうだなあ」  ここで正直に言うとより怒るんだろうな、と兄の性格を完璧に把握している倫明は思う。 「なんだ。難しいのか」 「そりゃあそうだ。簡単にはいかないね」  しかし誤魔化してもすぐにばれることだしと、倫明は正直に答えた。すると、思い切り舌打ちする音が電話から響く。 「だよな。斎藤さんがある程度勉強して調べてくれているが、小さなブラックホールを作るようなものだとか言ってたからな」 「うん。まあ、その方法もあるね」  そっちでもちゃんと勉強していたのかと、倫明は頷きながらも驚いてしまった。下手に誤魔化さなくて正解だったわけだ。ついでに、聡明も頭ごなしに怒鳴っていたわけではないと知ることが出来た。 「出来るのかよ」 「理論上は」 「出た。学者様お得意の一言だ」
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