偽りの島に探偵は啼く

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 すでに食べ始めていた美樹は、汁を啜って満足そうだ。他も緊張していたせいか、温かい蕎麦に一息吐けている様子だ。朝飛も早速とお汁を飲むと、温かく優しい味に緊張が解れるような気がした。そこから一心に蕎麦を啜ってしまう。上に載っていたかき揚げも絶品の美味しさだ。 「いやあ、満足」 「そう言えば六時半に朝食を食べてから、バタバタだったもんね」 「ああ。それはそうと、川瀬さん。頭痛止めは飲んだのかい」 「忘れてた。でも、この緊張状態のせいか、頭痛はしてないね」  美樹はそう言ってふとレストランの出入り口へと目を向ける。その少し先に、志津の遺体を寝かしてあるのだ。それを思い出すと、途端に不安感が込み上げてくる。 「問題を棚上げにしていいのかとは思うけど、プロに任せるのが無難だな。さすがに高校でちょちょっと謎を解決するのとは違う」  朝飛は首を突っ込まないのが無難だよなと、珍しく消極的なことを言う。  普段はどんな事件にも首を突っ込むというのにだ。気が回る性格をしている分、厄介事と見るとすぐに助太刀するのが朝飛なのだ。 「そうだけど、犯人がいるはずなんだよね」
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