偽りの島に探偵は啼く

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 そこに再び日向が声を掛けてきた。ちょいちょいと、再び窓辺に呼ばれる。とはいえ、レストランという限られた空間での出来事だ。全員の視線が窓側に移動した二人に注がれている。 「他には話せないことですか」  こそこそ相談というのは怪しまれるのでは。朝飛はそう言うと、他に訊ねる前にまずあなたに、と言われてしまった。 「はあ」 「倫明さんが研究者の中心に据えていた方ですからね。まずはあなたに相談するのがいいと思いまして」 「はあ、なるほど」 「それで、その倫明さんと聡明についてですが」 「はい」 「あの二人ならば、犯行は可能ということですよね」 「――」  いきなりとんでもない話題を振られて、朝飛は咄嗟に言葉が出て来なかった。あの二人ならば突飛なトリックなんて必要ない。それは消去法で考えればすぐに解ることだ。あえて、いや、台風の中だからこそ、今まで考えていなかったに過ぎない。 「もちろん、そんなことをする理由に心当たりはありませんし、聡明に関してはこの研究所に反対でしたが、倫明さんは反対していたわけではありません。しかし」 「他が不可能となれば、蓋然性は高いと」
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