偽りの島に探偵は啼く

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 朝飛の意見に、日向はううむと唸ってしまった。何か接点があればこのまま疑えるところだが、接点がないのにあんな不可思議な殺人を犯すとは思えない。 「確かに不可思議ですよね。明らかに、無抵抗のところを襲ったとしか思えない死体でした」 「ええ。その点でも、倫明は該当しないと思いますよ。普段から接点はないですし」 「ううむ」  しかし、容疑者がいないのだ。これをどうすればいいのか。 「まあ、ちょっとした聞き込みは必要かもしれないですね。とはいえ、こうやって話していると全員が注目してしまいますし、他の誰かが聞いている状況で、本当のことを喋ってくれるかどうかは不明ですよ」 「ですよね。それは問題です。あと、下手に感情論になっても困ります。特に、台風の中ですからね」 「そうですね」  ここで自棄を起こして外に出られると厄介だ。それも考えてまず朝飛に相談したというところか。しかし、日向はじっと朝飛を見ている。まだ何か言いたそうだ。 「あの」 「小宮山さん。研究の相談という形で個別に聞き出すことって出来ないですか」
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