偽りの島に探偵は啼く

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「何だい」 「足立さんがあえて二階にしたのも、田中さんとしょっちゅう顔を合わせるのを嫌がってじゃないかな」 「えっ」 「だって。いくら階段の上り下りが面倒とはいえ、招待客は全員を三階にって言っている中、わざわざ二階にしてもらうかな。そりゃあ、斎藤さんも何でも聞くって前置きしてたけど、階段を上り下りしたくないって妙な理由だと思わないか」 「ううん」  そこは信也に確認しないと何とも言えないところだ。とはいえ、訊き辛い内容でもある。早速嫌な状況になってしまい、朝飛は思い切り腕を組んだ。 「まっ、一つの情報ってことで」 「それは当たり前だよ」 「でも、ここで殺すことはないよね」 「それは」  大前提ではないか。朝飛は何を馬鹿なことをと呆れてしまう。というより、どんな理由があっても殺人は駄目だ。 「まあ、そうなんだけど。でも、ここっていわば密室みたいなものだろ。他から出入りが出来ないんだから、絶対に犯人はこの中にいることになる。そんな状況で殺人ってリスクしかないよね」 「そうだな」
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