偽りの島に探偵は啼く

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 嫌な表現だなと朝飛は顔を顰めてしまう。と、話題がずれた。 「じゃあ、佐久間に関して何か知らないですか」 「そうだな。佐久間君のことは知らなかったというしかないね。君みたいに高校生ながら大学教授を論破した、なんて派手な実績があるわけじゃないし」 「それ、実績じゃないです」 「そう? まあ、彼はそんなに印象に残るタイプじゃないよね。がっと議論を吹っかけてくるわけでもないし。というか、小宮山君とは付き合い長いんだろ。よく知っているんじゃないか」 「いや」  知っているって、知り合ったのはつい最近だ。何かと喋りやすく、また馬が合ったので、何となく仲良くなったというのが事実である。 「家庭環境のせいだろうなあ」  自分もそうだったから、余計に倫明とは一緒にいやすかった気がする。今回、兄の聡明とのやり取りを見ていて、それをはっきりと感じたものだ。 「ああ。あのお兄さん、おっかなそうだもんね。ってか、小宮山君、お兄さんがいるんだ」 「ええ」
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