偽りの島に探偵は啼く

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「クールに出来ないの? その方がカッコイイわよ」 「そう苦情を言われましても、これが素ですから」  どうして日頃から取り繕って生きなければならないのか。アイドルじゃあるまいし、ただの高校生にそんなスキルは要らない。  というか、そんな取り繕う日々はもうごめんだ。  思わず拳を握り締めてしまう。 「まあ、だから真剣に交際を申し込まれたのは事実みたいよ。あんまりにも真剣で重たいって思ったって言ってたし」 「重たい」  話題が代わり、朝飛はゆっくりと手の力を緩める。 「ほら、結婚前提ってやつ」 「ああ」 「大学生とはいえ、結婚願望があるってことよね。でも、女性にとって結婚は大問題。決断はそう簡単に出来るものじゃないわ。男と違ってダイレクトにキャリアに響くからね。これから学者として活躍したいと願っていたら、ちょっと無理って断っちゃって当然よね」 「へえ。そういうものですか」  解らん。それが正直な朝飛の感想だ。それは真衣にしっかり伝わってしまったらしく、思い切り呆れた目を向けられた。どうにもここにいる全員に呆れられてしまっている。 「そんなに俺、ずれてますかね」
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