偽りの島に探偵は啼く

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 その後、織佳からも真衣と同じ情報を引き出し、さらに同じ指摘をされてダメージを被ることとなった。  それはいいとして、ついに問題の信也だ。 「ああ、そうだよ。やっぱり色々言われてんだろうなって思ってたけど、ほとんどの奴が知ってるんだ」 「みたいですね」  信也は別に気取った様子もなく、缶コーヒーを飲みながら苦笑しただけだった。それに拍子抜けすると同時に、印象が違うことも考慮する。 「先輩が田中さんに惚れていたなんて意外ですね」 「そうか。ああいう大人しいけど男勝りな感じ、いいなって思ったんだよね」  そう言うと、信也は志津の遺体がある方へと目を向けた。その目はまだ好きなんだろうなと、そう思わせる熱っぽさがあった。  さすがに疎い朝飛だって、その眼差しに含まれるものくらいは読み取れる。 「どうして、殺されたんだと思いますか」 「さあ。それは俺が知りたいよ」 「何かトラブルを抱えているっていう話は」 「知らねえな。俺以外に告白してフラれた奴がいるんだったら別だろうけど」
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