偽りの島に探偵は啼く

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「ええ」  もう誰も研究の話題なんてする気がないしと、朝飛はぐったりとする。結局、全員が朝飛の聞き取りに協力するという形で納得しているのだから恐ろしい。 「とはいえ、あの時間全員がレストランにいたのは間違いないんだぜ。相当なトリックを使ったか、もしくは、いない佐久間兄弟のどっちかか、だろ」 「まあ、そうなります」  そう。結局はその二択になってしまう。しかし、トリックにしろ佐久間兄弟のどちらかが殺したにしろ、大きな問題がある。 「台風か」 「ええ。さっきも斎藤さんと話していましたが、感覚が違うんですよ。ここでの台風と普段の台風って」 「確かにものすげえもんな。台風中継の中にいるみたいっていうか。ほら、沖縄の映像だとこんな感じだろ」  感覚が違うのには同意すると、具体的な例えを出して言う信也だ。たしかに沖縄は勢力が強いまま当たることばかりだから、まさに今、目の前の風景が中継されているようなものだった。 「そうか、沖縄か」 「ま、沖縄なんてここ最近、行ったことないけどね」 「出身の人もいないですね」 「だな。沖縄の人って名字が特徴的だし」 「ええ」
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