偽りの島に探偵は啼く

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「いやあ、そうなるよね。ともかく、七月の二十五日から八月の二十四日まで暇かな」 「はあ、まあ、暇だけど」  それで一か月。  美樹は返事をしつつも嫌な予感満載だ。それも島で研究。意味が解らない。自分たちは科学部とはいえただの高校生。しかも小笠原諸島になんて、縁もゆかりもない。 「あっ、大丈夫だって。うん、じゃあ、俺は川瀬さんと共同研究という形でお願いするよ。じゃあ」  だが、悩んでいる間にも一か月の小笠原での研究が決定してしまい、困惑するしかない。 「あの」 「ああ、説明するから待ってくれ」  電話が終わったので説明をと言おうとすると、資料が来ているからと、先にメールを開いた。そしてそれをすぐに美樹のスマホに転送してくれる。 「一体何なんなの」  勝手にどんどん話が進んでいることにイライラしつつ、転送されたメールに目を落とした。そして、より一層怪訝な顔をしてしまう。 「そんな顔をするなよ。俺だって電話の相手が佐久間じゃなければ、こんな突飛な話は信じていない」  朝飛は困ったもんだろとスマホを振る。
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