偽りの島に探偵は啼く

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 確かに困ったものだ。こんなこと、普通は起こり得ないだろう。そんな内容なのだ。 「そう。日本有数の金持ちとして知られる佐久間一族。そこの現トップというか会社的には会長にあたる佐久間繁明(さくましげあき)。この人が企画したことだ。何でも昔から宇宙の始まりを知りたくて仕方なかったらしくてね。今回、研究のための財団を立ち上げたんだ。そして、その夢を高校生や大学生たちに託したいと考えているんだ。さらに、びっくりなことに加速器まで自前で用意してしまったらしい」 「か、加速器まで」  加速器とは物理学の素粒子研究において欠かせない機械なのだが、これが途轍もなく大きい代物なのだ。有名なのはヨーロッパにあるCERNの加速器で、その円周は山手線と同じと言われている。 「で、島なんだよ」 「ひょっとして、個人所有の島にそれを作ったと」 「ご名答」 「マジか」  さすがにそれはやりすぎだろうと、美樹は呆然としたものの、企画したのが佐久間繁明とすれば、そのくらいはやりかねないかもとも思ってしまう。この間も一千万もする宇宙旅行に行く権利を、ぽんとキャッシュで買ったと話題になっていた。
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