偽りの島に探偵は啼く

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 そうなると、朝飛が協力するのも無理ないか。ただでさえお節介なのだ。イケメンで優しいなんてどれだけ完璧なんですかと聞きたくなるほど、朝飛は何かと困っている人に手を貸したがる。  そういう性分だと本人は言うが、これは過去に何かあったなと美樹は踏んでいる。 「大変だと思うよ。それにしても、佐久間があの佐久間財閥の一人だったとはねえ。人は見かけによらないなあ」  純朴そうな倫明の顔を思い出し、朝飛はやれやれと呟く。 「見た目では解らないでしょ。って、財閥はすでにないし」 「そうだった。しかも、佐久間って旧財閥系でもないしなあ」 「そうね。戦後の混乱期から一気に伸し上がったんだっけ」  詳しくは知らないが、高校生でさえこの程度の知識があるのだ。それだけの影響力を持った一族であるのは間違いない。手広い商売と時流を読む力で、日本経済のほぼ頂点に君臨する企業の一つだ。誰もが何らかの形で佐久間の商品を手にしていることだろう。
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