untitled 001

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考えても何も浮かばない。ただ流れてゆく文字のかたまりはバラバラにほどけてスマホの外に垂れて漂っていった。自分の思考が外側にあるとき、何もなくなった自分の身体の内蔵と血液とともに、声と魂とやらが煌めくのだ、と誰かが口にしていたような気がするが、私はそいつの発言を信じない 想いが浮かばなくても私は綴る。綴り続ける。ロボットのようにAIのようにプログラムを吐き出すプログラムのように文字を吐き出し続ける。言葉や文章に感情などない。私が私であるのは、ひとつの文字に組み込まれた縦と横と斜めのまっすぐな線と歪曲した線との間にある空白にしか存在しない だが言葉など持っていない。私の中に具体的な言葉はない。頭に浮かんでは消える、よどんだ思考のかたまりだけが漂っていた。影のように黒く、輪郭はゆがんで、陽の光がなければ存在し得ず、かといって自ら主張することもなく『そこ』にいるだけだった。ただ徒然なるままにあるだけだった。 物語を進めるべきか、終わらせるべきか、葛藤などない。私はまっすぐと曲がりくねった線を描くだけだった。人々が何を思って、何を読み込み影響を受けて、何を発するのか知ったことではない。私は神ではない。天上にも天下にも居ない。唯一の存在ではない。どこにでもいるあなたが私だ。 (了)
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