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さて、どうしてこうなったんだっけ……仰向けに布団に寝転がっていた智絵里は、ぼんやりと天井を眺めていた。両脇でおしゃべりを続ける娘たちに、何度も「しーっ」と口の前に人差し指を立てながら静かにするよう伝える。しかし一向に終わる気配のないお喋りに、智絵里のイライラ度数が上がっていく。
「ママ、怖いから一緒に寝て!」
「だって枕返しが来るかもしれないよ!」
そんなふうに言われては、もう小学生なんだから子どもたちだけで寝なさいとは言えず、仕方なく添い寝をすることになったのだ。
あーあ、これから食器を洗わないといけないし、洗濯をして干す作業も残っている。明日の朝食用のお米を研ぐでしょ、娘たちの水筒を洗うでしょ、それから……そう思った時だった。
ガチャン、という音がし、咲良と芳乃のお喋りが止まる。
「な、何の音……?」
「怖いよ、ママ……ドキドキする……」
二人は智絵里にピタリとくっついて離れようとしない。ハッとした咲良が頭を上げて芳乃に囁きかける。
「もしかしたらぬらりひょんかもしれない!」
「どうしよう! お茶の準備してないよ!」
ソワソワし始める二人を見ながら、智絵里は笑いを堪えるのに必死だった。
いやいや、どう考えてもこの時間にドアを開けるのはパパしかいないでしょ! その考えが吹き飛ぶくらい、頭の中が妖怪一色になってるなんて可愛いんだから。
「ママ……ぬらりひょんだったらどうしよう……」
咲良が怖々口にした時、ゆっくりと子供部屋の扉が開いたため、二人は智絵里に抱きつき叫び声を上げた。
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