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「あれ、まだ起きてたのか?」
部屋の中をひょっこり覗いた父親の恭介は、二人の声に驚いたように目を見開いた。
「あーっ! パパだー! おかえりなさーい!」
「はい、ただいま。ママも一緒に寝てるなんて珍しいね」
「だってね、妖怪が出るかと思ったら怖くなっちゃったね! 今だって、ぬらりひょんが来たかと思ったんだもん!」
「パパがしてくれた妖怪のお話が怖くて眠れなくなっちゃった〜」
その言葉を聞いた智絵里はゆっくり起き上がると、目を細めて恭介を睨みつける。
「……昨日は咲良、今日は芳乃。昨日って何かあったかしら? あぁ、そういえば習い事のお迎えをパパに頼んだわね」
「そうなの! 帰る時にパパがお話してくれたんだよ!」
「なるほど……じゃあ二人がやけに妖怪について話しているのは、パパが原因だったわけね」
智絵里の冷たい視線を受け、恭介は戸惑いながらもどこか嬉しそうな表情になる。
「やだ……ママのそういう視線、なんかすごくドキドキするんだけど」
「冗談はいいから。私はやることがたくさんあるのに、この妖怪トークのおかげで何も出来てないの! パパ、とっととお風呂に入って、責任もって二人の寝かしつけをしなさい!」
「りょ、了解です!」
そう言うと、恭介は慌ててドアを閉め、猛スピードで浴室に向かった。それを見ていた子どもたちがキャッキャと笑い出す。
「あはは! 妖怪よりもパパよりも、ママの方が強いかも〜!」
「妖怪が来たら、ママがやっつけてくれる?」
智絵里は微笑むと、二人の頭を優しく撫でる。
「当たり前でしょ。そんな妖怪、ママがすぐに追い払っちゃうんだから」
「本当?」
「ママすごーい! もうこれでドキドキしなくて済むねー!」
「はいはい、明日も学校なんだから早く寝なさい」
「はーい!」
咲良と芳乃の顔からは不安げな表情は消え、安心したように眠りについた。
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