つむぎとナナコ

　私には、ユイという二つ下の妹がいた。少し気が強いけど、健気で可愛らしい子。
　会食やパーティーで両親が留守にする時は、寂しさを紛らわすかのようによく甘えてきた。

『お姉ちゃん、どうしてみんな私にいじわるするの？』
『ユイはかわいいよ。だから、みんな嫉妬してるのよ』
『……もう学校なんて行きたくない。やめたい』

　小さく震える頭を撫でるだけで、なにもしてあげられなかった。
　両親の手前、嫌がらせを報告するどころか、不登校や中退などと深瀬の名に傷をつけるわけにもいかず。ユイはただ、毎日を耐えるしかなかった。
　愛らしい唇を噛み締める表情を見ながら、これほど美しい子でも、世界は歪んでゆくのだと初めて知った。

『……ユイの味方は、お姉ちゃんだけ』
『もちろん。ずっとずーっと一緒だから』

　二年前、妹のユイは自らこの世を去った。リビングで私に泣きついていた最後の夜を、今でも鮮明に覚えている。

　落合七奈子は、ユイに少し似ていた。髪の長いところや、模型みたいな顔のパーツ。みんなから愛されているはずなのに、どこか孤独に見えるところも。

　初めて見た瞬間、──あの子だと激震が走った。