7人が本棚に入れています
本棚に追加
約束をして一ヵ月もしないうちに、白木カエや他生徒への嫌がらせがなくなったと小耳に挟んだ。
彼女のまわりには、以前より人が増えた気がする。更生したと思われているのだろう。それなら、結果的には良かったのかもしれない。
放課後、今日も誰もいない教室で、私は七奈子を抱きしめる。艶のある黒髪を撫でながら、頬を擦り合わせて。
まるで、雨に打たれる子犬を慈しむかのように。
「あなたはかわいい。世界一大好きよ。なにがあっても、私が必ず守ってあげるから」
そうすると、七奈子は瞼を閉じて抗うことをやめるの。鎖で繋がった手を腰へ回して、自らを委ねている。
思ったより時間がかかったけれど、ようやく取り戻すことができた。もう安心。みんなにも平和な世界が訪れて、一石二鳥でしょう。
──だって、もう落合七奈子はこの世にいないんだもの。
「お姉ちゃん、大好きよ」
「私も世界で一番大好き。ずっとずーっと一緒だから」
「今度は裏切らないでね、ユイ」
fin.
最初のコメントを投稿しよう!