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褒められて嬉しくなるのは、子供だけではない。パーティーの前日までみっちり練習を積み、初めて、人前で披露した。
芳明はダンスを、久仁子に習ったことを隠さなかった。男の沽券だとか、面子などは、意味を成しはしない。優れた婦人は讃えられるべきだと、当然のように考えていたからである。
そんな芳明の考えが嘲笑されなかったのは、若さの為かも知れない。登美子譲りの華のお陰かも知れない。
もしかしたら、久仁子の無垢な可愛らしさのせいかもしれなかったし、二人の微笑ましい仲睦まじさが理由だったかもしれない。
どんな理由があるにしろ、二人は好ましい夫婦として、社交界に受け入れられたのである。
久仁子は社交界に慣れても、あの、はにかんだ笑顔を失わず、芳明を喜ばせた。
芳明はあの笑顔が何よりも好きだったのだ。
恋をしていた。この世で最も純粋な恋を、二人はしていた。
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