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 「嬉しいよ」  芳明がやっとの思いで言うと、久仁子は涙を零した。  言葉とは裏腹に、芳明はなんの感情も持てなかった。 (私は冷たい人間なのだろうか?  いや、まだ実感が無いだけなのだ)  自らに言い聞かせると、ポッケットから手巾(ハンカチ)を取り出し、久仁子の涙を拭いた。  
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