いらないものを、僕にくれる兄

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「ありがとうって……何で?」 「……ごめん…全部歩から聞いたんだよね。歩は賞状のこと、って言ってたけど…裕樹は、私のことに関して怒ってくれたんだよね……?」 舞香が僕と歩を交互に見て言う。 「え……?」 「裕樹が倒れた後にね、歩に全部話してって言ったの。そしたら、裕樹が倒れる直前の会話も話してくれて……」 僕は舞香の話が信じられなかった。 舞香に頼まれて歩が正直に全てを話すということが、あり得ないことに思えたからだ。 「裕樹が賞状破られただけでカッターを持ち出す程怒るとは思えなかったの。だから、他に何か心当たりはない?って歩に聞いてみたんだ。普段、絶対歩に対して怒ったりしないんでしょう?それなのにそんなに怒ってくれたんだと思うと……嬉しかった」 俺の疑問とは裏腹に、心から嬉しそうに語る舞香と、バツが悪そうに目を逸らしている歩を見れば、どうやら舞香の話に嘘はないようだ。 「裕樹……悪かったよ……」 ずっと目を逸らしていた歩が一瞬だけこっちを見た。 不本意そうに口を尖らせてはいるが、歩の口から謝罪の言葉が出たことに僕は驚いていた。 「……謝るのは、僕に対してじゃないと思うな」 僕は舞香を見て言った。 舞香は歩から全てを聞いたことで、想う相手からの暴言も知ってしまったのだから……
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