いらないものを、僕にくれる兄

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「ねえ裕樹…私ね、裕樹に言いたいことがあるの」 賞状事件の次の日。 舞香は放課後、僕を学校の中庭に呼び出した。 「言いたいこと?」 「うん。あのね……私…実は好きな人がいて…」 そう言う舞香の顔はいつもより赤らんでいて、潤む瞳はこれまでに見たことのない色をしていた。 脚が震え、息が荒くなっている。 かなり緊張しているのだろう。 僕は何も言わずに舞香の言葉を待っていた。 「……私が好きなのはね…歩なの。」 僕はきっと、この言葉が出てくるのを心のどこかで準備していた。 だけど、それと同じくらいの強さで、歩ではない方の名前を期待していたのも事実だった。 「そうなんだ……」 「うん…!だから裕樹…これからまた、三人で遊ぶ機会を増やしてくれない?」 「……分かった。歩に話してみるね」 「ありがとう!」 ニコニコと弾んだ声を出す舞香は、僕の方を見もしない。 既に僕と歩と三人で遊ぶ未来を…… 歩と二人で歩く未来を思い描いているようだった。
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