いらないものを、僕にくれる兄

11/16

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「ただいまー」 午後6時。 歩が家に帰ってきた。 僕は歩より20分ほど早く帰宅し、自室にいた。 「おう裕樹!俺さ、また彼女できたわ」 昨日までの不機嫌さが嘘のように、爽やかな笑顔で報告してくる。 「彼女3人目だよ?3人目。同時進行とかできるかな〜」 「歩。今日舞香と話したんだけどね、また三人で遊びたいって言ってたよ」 「は?舞香?」 「うん。けど、彼女が3人もいたら忙しくなるの…かな?だからほんとにたまにでいいんだけど…」 「悪いけどお前らみたいな底辺と遊んでる余裕なんて無いんだわ。一緒にいても映えねえし。俺のイメージが悪くなんじゃん?」 「底辺……?」 「そーだろwお前は言わずもがな、舞香とか俺の歴代彼女の中にもいないレベルのブスだからww」 「ブス………」 僕は歩の言葉を聞きながら、舞香の笑顔を思い出していた。 僕に気持ちを打ち明けたときの照れた顔。 みんなでまた遊びたいと言ったときの無垢な瞳。 僕を褒めてくれる時の……優しい声。 僕は気づいたら机の上からカッターを取り出し、歩の部屋の方へと向かっていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加