いらないものを、僕にくれる兄

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「……うき……裕樹っっ!!」 叫ぶ女性の声でハッと目を覚ます。 (あれ………?) 「裕樹!!よかったっ!!」 「え?……うわっ!」 うっすらと目を開けた僕に、舞香が泣きながら飛びついてきた。 「ちょっ…舞香……?これ…どういうこと?」 僕は今、自分の部屋のベッドの上にいる。 カーテンから差す正方形の光が、僕の部屋を明るく照らす。 「裕樹……一昨日の夜、部屋で倒れたんだよ!そこからずーっと寝てて……目が覚めなかったの」 涙目になりながら、舞香が僕の顔を見て言う。 「一昨日の……夜…?」 「そう!裕樹がポスターの絵で表彰された次の日だよ!」 舞香の話に、僕はハッとした。 確か、僕はその日…… 「舞香……歩はどうしてる?」 確かに僕は、歩を切りつけてからの記憶がない。 もしかして、歩は…… 「歩?そこにいるよ?……ほら歩!そろそろ出てきなって!」 舞香がカーテンの奥に向かって声をかける。 「…………ああ……」 「……歩………?」 カーテンをシャッと開けて、気まずそうな顔をして出てきた歩を見て、僕は驚いた。 その顔には、傷一つなかったからだ…… 「歩……」 「なんだよ裕樹……お前、一昨日のこと覚えてないのか?」 「え…?」 歩は溜息を付いてこちらへやって来る。 「裕樹……俺が悪かったよ」 まだ訳がわからないでいる僕に向かって、歩が真っ直ぐそう言ったのである。
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