いらないものを、僕にくれる兄

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「歩……?」 「だーーーもうっ!分かれよ大体!!!」 ポカンとしている僕に苛ついたように怒鳴る歩。 「ごめん……」 「歩!ちゃんと謝りなさいよ。」 「…うるせえよ……ったく…ちゃんと謝ってんだろーが…」 「謝る……って…何に?」 僕は歩が何かしらの理由で僕に対して謝ろうとしていることに驚いていた。 というか…僕があの日、歩を傷つけていないのだとしたら、あれは……? 「……お前……俺が賞状破ったこと…相当怒ってたんだろ?」 「え?賞状…?」 思いもよらない歩の言葉に、僕は思わず素っ頓狂な声を出す。 「だから次の日…。お前は俺に向かってカッターで切りつけようとしてきたじゃん。そしたらお前が急に倒れて……。結果俺は無事で済んだけど。」 歩の説明に、僕は混乱する頭を懸命に追いつかせようとしていた。 つまり僕はあの日、歩に向かって行ったが、辿り着く前に倒れたということか……? 確かに僕は歩の言葉に憤り、これまで溜めてきた歩への不満と鬱憤と嫉妬の気持ちを抑えきれずに、歩を傷つけた。 だけどそれは、僕の夢の中での話だった……。 「正直……そこまでお前を怒らせたとは思ってなかったし……けどあの時のお前、顔がガチだったからさ…」 僕は歩の言葉に反論しようとした。 僕があの日キレたのは、賞状のことじゃなくて…… そう言おうと思って言葉を止めた。 俺と歩の隣には、舞香が心配そうな顔して座っているからだ。 きっと、舞香はあの日の歩の発言を知らない。 だから…… 「裕樹、ありがとね」 僕が言葉に詰まっていたら、何故か舞香が僕に向かってお礼を言ってきたのだった。
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