いらないものを、僕にくれる兄

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「おい裕樹……これいらないか?」 歩がブレザーのポケットから出したスマホを僕に見せて言う。 そこに映るのは、プリクラの加工によって目が最大限に大きくなってる高校生らしき女の子の写真だった。 「俺の元カノなんだけどさー。こいつ、見た目は派手なくせにキスすらさせてくんねーの。つまんねえからもういらなくなって捨てたんだ。だからお前にあげてもいいぜ?」 ニヤニヤと大きな目を細めながら、口元を歪めて歩は僕に言う。 高校生になった僕たちは、昔に比べて更に差が開くようになった。 僕は毎日怒られずに生きるのに精一杯なのに、歩は毎日のように色んな女子たちと遊んでは彼女を変えている。 「……いいよ別に。僕、彼女とかいらないし」 そう言って歩の差し出すスマホから目を離した。 「……へえ…」 絡みつくような目線で僕を見て、歩はスマホをしまって部屋に行った。 (人をモノみたいに扱うなんて、ひどい…) 僕は歩の後ろ姿に向かって、心の中で非難した。
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