いらないものを、僕にくれる兄

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「あーークソッ!!!」 ある日、歩が相当機嫌を悪くして帰宅した。 「……どうしたの?」 僕は、薄いカーテンで仕切られた「隣の部屋」から聞こえてくる怒号に対してそう問いかけた。 「……おい裕樹……俺が女子に振られるって、考えられるか?」 「え?」 「俺が女子に振られる理由だよ!!……今日、人生で初めて振られたわ…」 カーテンから顔を出した歩は、怒りのあまり目を充血させながら僕に話す。 その勢いは、まるで僕に向かって鋭利な何かが刺さってくるかのようだった。 「歩が振られる理由…?僕には思いつかないな……」 「だろ!?お前みたいなやつならともかく、何で俺が振られるんだよ!!」 「何でだろうね……でも……」 僕は歩の怒りを鎮めるように、努めて落ち着いた声を出す。 「歩の良さに気が付かなかった女子なんて、歩にとっては『いらない』んじゃないかな…?」 僕の言葉に、歩は一瞬目を見開いた。 「…ああ……そうだな……そうだよな…俺の良さが伝わってない女とか、こっちから願い下げだわな!!」 自分なりに納得したのか、歩は勢い良くカーテンを閉めて自分の部屋に戻っていった。
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